空中写真で楽しめない鉄道


 1年ほど前の『鉄道ファン』2010年7月号において、私は「空中写真で楽しむ鉄道廃線跡」を書きました。これはインターネット上で公開されている空中写真を使って、各地の廃線跡をたどるという趣旨の記事でした。
 この記事でも少し触れましたが、ネット上で公開されている空中写真といえば、今では検索サイト大手のグーグルが提供している『Googleマップ』『Google Earth』が有名です。Googleマップは航空写真モードを備えた地図サイトで、特定の場所の地図や航空写真をホームページやブログに貼り付けることが可能。Google Earthは専用ソフトを使って空中写真を閲覧することができます。

 このGoogleマップGoogle Earthで公開されている空中写真のうち、太平洋岸の写真が3月11日の地震以降に撮影されたものに一部更新されました。これを使って津波に巻き込まれた沿岸部の鉄道各線を見てみると、素人目に見ても復旧には相当な時間がかかりそうであることが分かります。
 まずは気仙沼線志津川駅付近を見てみます。どこに駅があったのか、線路はどこを通っていたのか、地図の記号を重ね合わせないとよく分かりません。


 続いて石巻線の終点、女川駅付近です。この駅は海面からそこそこ高い位置にあったはずですが、ここも線路がどこにあったのか、分かりにくくなっています。駅の周辺に目を移せば、沢伝いに山の奥までがれきらしきものが入り込んでおり、津波が相当な高さに達していたことが分かります。


 最後は常磐線新地駅です。跨線橋は全壊を免れているようですが、それ以外は泥にまみれて駅舎の姿も消えています。駅の西側に見える横転した車両は、窓並びからE721系であることが分かります。


 他にも、コンテナ車が線路からかなり離れたところで散乱して横たわっているなど(常磐線山下〜浜吉田間)、気が重くなるというか、正視できない空中写真が多数公開されています。各地で放置されている鉄道車両を見ていると、この列車の運転士や車掌、乗客は無事だったのだろうかと気になります。

※補足(2011年4月8日20時99分):グーグルは太平洋岸の空中写真を頻繁に更新しており、がれきの撤去が徐々に進んでいることがうかがわれます。
 更新が進むにつれて、いずれはこのエントリーに貼り付けた空中写真と、本文の内容が合致しなくなると思われます。逆に言えば、完全に合致しなくなったときが、復興を果たした日になるわけです。