「新線開業のない3年間」は短縮されるか

 昨年10月に「2012〜2014年が新線開業のない3年間になるかもしれない」という趣旨のことを書きましたが(2012年は「131年ぶり」になるか)、これが少し短縮されるかもしれない新線計画が浮上してきました。JR西日本可部線電化延伸事業です。
 現在の可部線は、広島市の中心部にある山陽線横川駅から北上して可部に至る全長14kmの電化路線です。かつては可部からさらに北西方向に進み、島根県との県境にほど近い、写真の三段峡駅までの非電化区間(46.2km)があったのですが、利用者が少なかったことから2003年12月1日に廃止されてしまいました。
 ところが、廃止された区間のうち、可部から約1.7kmを電化した上で営業を再開する構想が最近になって動きを見せ、今月に入ってから

JR廃線、初の復活…広島市の可部線
〜2011年度に着工、13年度の完成を目指し、JR西日本の事業化判断を待って運転を開始する見込み。〜
読売新聞 2011年2月4日14時53分

などと報道されています。
 可部駅から1.3km先にあった河戸駅までの区間は沿線の開発が進み、古くから電化の構想がありました。JR西日本が可部〜三段峡間を廃止した際も、可部〜河戸間については将来の「電化再開」の可能性に含みをもたせています。
 昨年12月にはJR西日本が環境影響評価実施計画書を提出しており、それによると、旧・河戸駅からさらに400mほど進んだところまで電化路線として復活させ、中間部と終端部に新駅を設置することが考えられています(広島市ホームページ:手続き実施中の事業:(仮称)JR可部線電化延伸事業)。


 実質的には営業再開といえるもので、純粋な意味での新線開業といえるかどうか、やや怪しいところではあります。ただ、この区間JR西日本鉄道事業法に基づき第1種鉄道事業廃止届を提出して廃止しており、たとえ廃線敷を活用するものであっても、改めて鉄道事業許可を受けなければなりません。法律上はあくまで新線ということになります。
 可部線の電化延伸が報道の通り2013年度に完成したらどうなるのか。完成時期=開業時期と考えた場合、2013年4月から2014年3月までに開業することになり、2014年中の開業なら「新線開業のない2年間」、2013年中の開業なら「新線開業のない1年間」になり、「新線開業のない3年間」が1〜2年は短縮されそうです。
 とはいえ、可部線の電化延伸事業をもってしても、2012年が131年ぶりに新線開業のない年になることは確実な情勢であることに変わりありません。鉄道好きの立場としては、どこかで急にLRT構想が浮上して一気に工事を進め、2012年に開業…という話が出てくればと思うのですが。

コメント

  1. 牡丹鍋 より:

    ただ、その「新線開業」でネックになるのが踏切でして…。
    現在の法律では、新線開業時に踏切を設置してはいけないことになっているとか…。
    可部駅北の車止めから河戸の新駅予定地の間には比較的交通量の多い市道踏切が2〜3箇所あるんです。
    行政や鉄道会社がこの踏切問題をどうクリアするのかが見ものです。

  2. kusamachi より:

     牡丹鍋さん、コメントありがとうございます。
    >現在の法律では、新線開業時に踏切を設置してはいけないことになっているとか…。
     鉄道営業法第一条を根拠法令とする「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の第三十九条のことですね。
    「第三十九条 鉄道は、道路(一般公衆の用に供する道をいう。以下同じ。)と平面交差してはならない。ただし、新幹線又は新幹線に準ずる速度で運転する鉄道以外の鉄道であって、鉄道及びこれと交差する道路の交通量が少ない場合又は地形上等の理由によりやむを得ない場合は、この限りでない。」
     要は新線だろうと旧線だろうと、現行法令においては「踏切は禁止!」が原則で、ただし書きで例外を設けているわけです。
     可部線はどう頑張っても「新幹線又は新幹線に準ずる速度で運転する鉄道」にはなれませんから(笑)、これはクリア。問題は「交差する道路の交通量が少ない場合又は地形上等の理由によりやむを得ない場合」ですね。
     交通量がどの程度なら、あるいはどういう地形なら踏切が認められるのか、私には分かりません。鉄道局長通知の解釈基準に載っていたような気がするのですが、これが今、手元にないのです。
     現行法令のまま踏切を設けるとしたら、法令の柔軟な運用しかないと思うのですが、安全の問題にかかわってくるだけに、なかなか難しいでしょうね。