ミャンマーに渡るキハ183系

 APF通信社山路徹代表の拘束、アウン・サン・スー・チーの軟禁解除など、このところミャンマービルマ)の動きが慌ただしくなっています。
 個人的にはミャンマーというと、第二次世界大戦直後に新潟県塩沢町(現・南魚沼市)の薬照寺で亡命生活を送ったバー・モウに興味を持っていたりするのですが、仮にミャンマーの地理や歴史、人物などに興味がないとしても、鉄道系作文屋のわたしにとっては無関心ではいられない国の一つです。海外の鉄道に対する関心が薄いとされる日本の鉄道マニアでも、この国の鉄道車両には一定の興味を持っておられる方が多いのではないでしょうか。
 というのも、ミャンマー鉄道路線では、日本の鉄道車両が多数運用されているからです。
 鉄道車両の輸出といえば、近年は中国や台湾向けの高速鉄道車両が話題になっていますが、それ以前から通勤形電車などが輸出されていますし、日本の鉄道で廃車となった中古車両が、アジアを中心に輸出されている事例もあります。
 ミャンマーに輸出されているのは中古車両の方で、2003年に名古屋鉄道名鉄)のキハ20形が搬出されたのを皮切りに、日本の中古車両が続々と輸出されています。わたしが把握している限りでは、現時点で以下の車両がミャンマー国鉄線で運用されているようです。

 車両の大半は、新潟鉄工と富士重工がローカル線用として仕様を取りまとめた小型気動車シリーズのNDC、LE-CarII、LE-DCで、1980年代から全国各地の国鉄転換第三セクター鉄道に導入されていたものです(写真は北海道ちほく高原鉄道のCR70形CR70-3)。外観や車体の大きさなどは各事業者ごとに異なるものの、基本的な部品は共通のものが多いので、ミャンマー国鉄としても保守がやりやすいというメリットがあるのでしょうね。
 また、JRからは旧国鉄時代から使われていた気動車ディーゼル機関車ミャンマーに送られていますが、そのなかにはDD51形のように、車体を2分割して2両にしたという大改造を受けたものもあります。
 そしてつい先日、今度はJR北海道の特急形気動車キハ183系ミャンマーに送られるという報道がありました。

最初の183系、最後の展示会=旧国鉄特急、ミャンマーへ−北海道
2010年11月8日 時事通信
 旧国鉄時代の特急用ディーゼル車「183系」で最初に製造された車両が、このほどミャンマーに売却されることになった。引退後は北海道釧路市のJR車両基地に保管されていたが、13日に釧路駅のホームにお目見えし、最後の展示会が開かれる。(後略)

 ここまで来ると、ミャンマーの鉄道はもはや「動く日本の気動車博物館」の様相で、是非とも訪れてみたいところです。
 しかし軍政下の国、しかも軍事上の重要施設である鉄道となると、撮影もままなりません。わたしのようなちゃらんぽらんな作文屋がミャンマーを訪れ、許可も取らずに鉄道の写真をバシャバシャ撮ろうものならすぐに拘束され、帰国したらしたで、暖かい声をかけてくれる人などおらず、イラクの拘束日本人並みに世間にたたかれるのは必至です(苦笑)。
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