羽田空港国際線ターミナルの新駅


 昨日は、東京国際空港羽田空港)の再拡張事業に伴い建設された、新しい国際線旅客ターミナルビルに行ってきました。
 目的はもちろん海外旅行……ではなく、単なるターミナルビルの見物……でもなく、国際線旅客ターミナルビルの開設に伴い新設された、二つの連絡駅の見物です。

国内線から1.5km離れた国際線

 羽田空港は1978年の新東京国際空港→現・成田国際空港(成田空港)の開港以来、実質的には国内線専用の空港となっていました。
 その後、国際線旅客ターミナルビルが旅客ターミナル地区(国内線の第1旅客ターミナルビル・第2旅客ターミナルビル)の南東側に建設され、短距離の国際チャーター便が就航。そして今回の再拡張事業の実施により国際定期便も復活することになりましたが、従来の国際線旅客ターミナルビルは暫定的なもので、収容力も極めて小さいことから、新しい国際線旅客ターミナルビルが建設されたわけです。
 今回供用を開始した国際線旅客ターミナルビルは、A滑走路の西南西側にあり、従来からある国内線の旅客ターミナル地区からは、A滑走路を挟んで1.5kmほど離れています。このため、国内線旅客ターミナルビルとの連絡を前提に作られた京浜急行電鉄京急)の羽田空港駅や、東京モノレール羽田空港第1ビル駅、羽田空港第2ビル駅では、国際線旅客ターミナルビルへの連絡に対応できません。
 そこで、国際線旅客ターミナルビルへの連絡駅も合わせて建設されることになり、10月21日のターミナルビル供用開始と同時に開業しました。

京急新駅は地下線路に相対式ホームを追設

 品川から京急新駅の1番ホーム(羽田空港国内線ターミナル行き)に到着。京急の新駅は「羽田空港国際線ターミナル」を名乗り、空港線天空橋羽田空港間の中間に設置されています。空港線穴守稲荷駅から終点の羽田空港駅まで地下トンネルを通っていますが、国際線旅客ターミナルビルは空港線トンネルとの交差部に設けられたため、既設のトンネル内に2面2線の相対式ホームを追加しました。
 なお、国際線ターミナル駅の開業に伴い、旅客ターミナル地区にある羽田空港駅は「羽田空港国内線ターミナル」に改称されました。
 駅名標による駅名表記は、上から日本語仮名、日本語漢字、英語、韓国語の順で表記されているものと、英語、日本語仮名、日本語漢字、韓国語の順で表記されているものがあります。京急の仮名表記は平仮名で統一されているため、「ターミナル」が「たーみなる」と表記されているのは、ちょっと笑えます。
 なお、京急は今回の新駅開業に合わせて駅番号制度を導入しており、国際線ターミナル駅の番号である「KK16」の表記も見られます。
 駅名標以外の案内掲示をよく見ると、日本語と英語、韓国語のほか、駅名標には見られなかった中国語(簡体字)の表記も見られます。駅名標で中国語表記を入れなかった理由がよく分かりませんが、デザイン上の問題なのでしょうかね?
 プラットホームは、京急の駅としては初めて可動柵方式のホームドアが設置されました。ホームドアは通常、車両側の扉の開閉操作に連動して自動的に開閉する仕掛けになっていますが、この駅では車掌による手動操作になっています。
 列車が駅に到着すると、まず車掌がホームドアの開閉ボタンを操作してホームドアを開き、続いて列車の扉を開けます。発車時にはこの動作が逆になります。
 可動柵はグネグネと曲がるように配置されています。車掌がホームドアを操作するための空間を空けるため、両端がやや引っ込んで配置されているのは分かるのですが、ホームの中間にも「引っ込み」があります。空港線の列車は最大6両編成ですが、ホームより短い4両編成の停止位置を考慮したためでしょうか。
 1番ホームの改札口を抜けると、目の前には国際線旅客ターミナルビルに通じるエレベータがあり、さらに少し奥まったところにもエスカレータが3基あります。このうち1基(写真右)は出発フロア(3階)と直接結ばれていて到着フロア(2階)では乗降できず、下りを含む残り2基は到着フロアのある2階で分割されていて、出発・到着どちらのフロアにも行けるようになっていました。
 なお、2番ホーム(京急蒲田方面行き)の改札は到着フロアに設けられており、改札内に設けられたエスカレータかエレベータでホームに向かう形となります。1番ホーム改札を通って2番ホーム、あるいは2番ホーム改札を通って1番ホームに向かうことはできません。

ルートの変更を伴ったモノレール新駅

 京急新駅で下車して国際線旅客ターミナルビルの商業施設や展望コーナーなども見物しましたが、その辺の話は省略。続いて東京モノレールの新駅を訪れました。
 東京モノレールも、天空橋新整備場間に国際線旅客ターミナルビルに隣接する新駅を設置していますが、既設の線路はターミナルビルからやや離れた位置を通っていました。そこで、ターミナルビルに近づけるようなルートで線路を引き直し、そこに新駅を設けています。
 プラットホームは京急と同様、2面2線の相対式です。 地下の京急新駅と異なり、高架橋上に設置されているので、やや明るい雰囲気があります。
 線路をやや強引にターミナルビルに近づけたせいか、ホームが大きな曲線を描いているのが分かります。東京モノレールでは以前から可動柵方式のホームドアを導入していますが、この新駅にもホームドアが設置されています。
 モノレール新駅の名称は「羽田空港国際線ビル」で、京急新駅とは違う名称が採用されています。国内線旅客ターミナル地区にある既設の羽田空港第1ビル駅、羽田空港第2ビル駅は改称されていません。
 駅名標の駅名表記は、上から日本語仮名、英語、中国語(簡体字)・韓国語で、京急と異なり4カ国語表記です。日本語漢字による表記は東京モノレールのほかの駅と同様、隣接駅表示の部分に並んで表記されています。
 東京モノレール駅名標の仮名表記は、駅名にカタカナが含まれる場合はそのままカタカナで表記しているため、「ビル」の仮名表記も「ビル」のままです。
 ホームは3階相当の場所に設けられており、浜松町発の列車が発着する1番ホームは、ターミナルビルの出発フロアと段差なしでつながっています。というより、出発フロアと一体化していると言っても過言ではないでしょう。おかげで浜松町方面からやって来たモノレールの利用者は、改札を抜けると目の前に出発フロアが見えるという便利さです。
 一方、浜松町行き列車が発着する2番ホームは、2階の到着フロアとエスカレータ、エレベータでつながっています。
 到着フロアにも改札口があり、改札内エスカレータとエレベータで1・2番ホームの両方につながっています。
 改札口の脇には外国人旅行センターがあるのですが、英語表記は「JR EAST Travel Service Center」となっていて、東日本旅客鉄道JR東日本)の案内所であることが分かります。現在の東京モノレールJR東日本の実質子会社ですから、モノレール改札口の近くに案内所を設けるのは、当然と言えば当然でしょう。
 この案内所は、外国人旅行客向けのJR全線フリー切符『JAPAN RAIL PASS』やJR東日本全線フリー切符『JR EAST PASS』の引換所も兼ねています。ちなみにこれらの切符では、10月21日から東京モノレールも利用できるようになりました。

理想は「内際一体ターミナル」だが……

 新駅とターミナルビルとの連絡は動線も比較的よく考えられていて、京急、モノレールともに大きな問題はありません。強いて言えば、出発フロアと1番ホームが段差なしでつながっている東京モノレールの方がやや有利ですが、京急エスカレータとエレベータが整備されており、大差はないといえるでしょう。
 ただ、国内線〜国際線の乗り換えの不便さはどうにもなりませんね。建設用地の問題があったとはいえ、やはり同一ターミナル内で乗り換えできるようにするのが理想的ではあります。