鉄道好きにとって、新線の開業はそれなりにわくわくする「イベント」の一つです。鉄道が好きというわけではなくても、自分の住まいや勤務先の近くに新線が開業すれば興味を持つでしょうし、なかには通勤や通学で新線を使うことになる人もいるでしょう。
今後開業する予定の新線としては、12月に東北新幹線八戸〜新青森間の延伸があり、来年(2011年)も九州新幹線鹿児島ルートの博多〜新八代間と、名古屋の地下鉄桜通線野並〜徳重間が3月に延伸開業することになっています。それでは、九州新幹線と桜通線の延伸開業の次は、どこで新しい路線が開業することになるのでしょうか。
2010年10月現在の計画では、北陸新幹線長野〜金沢間が2014年度末に完成する予定となっていますので、おそらく2015年の春には開業することになるでしょう。これは逆にいえば、九州新幹線と桜通線の開業から北陸新幹線の開業まで、つまり2012年から2014年までの3年間は、新規開業がまったくない年になるということでもあります。
実は、明治初期の1872年に日本初の営業鉄道が開業して以来、鉄道法規が適用される鉄軌道事業線の新規開業がなかった年はほとんどありません。念のため、『鉄道百年略史』(鉄道百年略史編さん委員会、鉄道図書刊行会、1972.10)、『私鉄史ハンドブック
』(和久田康雄、電気車研究会、1993.12)、『鉄道総合年表1972‐93
』(池田光雅、中央書院、1993.8)などで鉄道路線の開業日を拾ってみたところ、新規開業がなかった年は、1873年、1878年、1881年の3回だけでした。
もし2012年に新規開業がなければ、なんと131年ぶりに鉄道新線の開業がまったくない年、ということになります。さらに2013年も新規開業がなければ2年連続となり、これは日本の鉄道史上初めてということになってしまうのです。
もちろん、2012〜2014年が新規開業のない3年間になるかどうかは、まだ分かりません。現時点でこの3年間に開業する予定の新線計画がないとはいえ、ごく短距離の路線であれば鉄軌道事業の許可・特許を受けて1〜2年で開業することもあります。たとえば2008年2月に軌道事業特許(正式には軌道運送高度化実施計画の認定による「みなし特許」)を受けた富山地方鉄道・富山市の富山都心線丸の内〜西町間0.94kmは、特許から1年10カ月後の2009年12月に開業していますから、2011年中に許認可を受けて2012年に開業する鉄道が計画される可能性もゼロではありません。
とはいえ、新規開業のまったくない年が発生する、その可能性が見えてきたということ自体、これまでほとんどなかったことで、日本の鉄道路線がついに飽和点に達したといえるでしょう。新線の開業でわくわくする機会が、これから大幅に減っていくことだけは間違いないようです。
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