このほど、鹿島鉄道(石岡〜鉾田)の廃線跡を転用したバス専用道が一部完成し、8月30日から専用道経由のバスの運行が始まりました。
廃線の鹿島鉄道線路跡にバス 公設民営で30日運行開始
(前略)専用道は、廃線になった同線のうち、石岡駅―四箇村駅間(計5.1キロ)の元鉄道軌道上に7億6千万円をかけて整備された。幅は4メートル(待避所は5.5メートル)。
専用道を利用して、石岡―小川駅間や石岡―茨城空港間などのバスが平日112便(土日・祝日は80便)運行。このうち、茨城空港へは平日、土日・祝日とも12便を運行する。同市によると、1日当たり1600人の利用を目標にしている。(後略)
asahi.com 2010年8月30日
鉄道の廃線跡や未成線跡を転用したバス専用道はほかにもいくつかあり、渋滞に巻き込まれず定時での運転がしやすいなどの長所があります。ただし、専用道は基本的に私道となりますから、道路の整備や保守にかかる費用はバス事業者が負担しなければなりません。また、廃止になる鉄道の多くは単線、つまり1車線分の幅しかないため、行き違いのための待避空間を各所に設ける必要があるなど、運用上の手間もそれなりにかかります。
わたしは奈良の五新線(阪本線)跡を活用した専用道バス(写真)を取材したことがありますが、アスファルトの状態が悪くて運行速度も遅く、専用道を走行するくせに一般道経由のバスよりやや遅いという逆転現象が起きていました。そもそも専用道経由の運転本数はひじょうに少なく、わたしが乗車した限りでは利用者もかなり少なかったです。これなら一般道に振り替えて、専用道の敷地はとっとと売却した方が、保守費用の節約になるのではないかと思いました。
鹿島鉄道跡のバス専用道の場合、実際は一般の公道として整備されているのですが、交通規制を行うことによって事実上の専用道としています。このためバス事業者が専用道の保守費用を負担する必要はありません。また、五新線とは沿線の人口規模が大きく異なりますし、とくに石岡駅付近は道路渋滞に悩まされていたようですから、専用道を整備するメリットはそれなりに大きいと思われます。
願わくば、専用道の整備によって輸送量が大幅に増加し、バスでは輸送力不足になって鉄道が復活……というところまでは行かないでしょうね、さすがに。
【関連記事】ある意味復活した茨城のローカル線〜鹿島鉄道
【関連情報】「バスでたどる廃線&未成線」(『鉄道のテクノロジー』Vol.14)
コメント
簡単に言うと、最初からバス専用道にするくらいなら鉄道で存続すべきだったと思います。どうしても鉄道を断念するのなら、跡地設備の撤去を最小限にとどめ、用地は鉄道に再活用できるように残しておくのがよかったのではと考えています。
・・・さん:
国土交通省鉄道局監修『平成十八年度 鉄道統計年報』(政府資料等普及調査会、2008.3)によりますと、鹿島鉄道の平均通過数量(輸送密度)は旅客が664人/日kmで、自治体等による金銭的な支援を考慮しても、鉄道として存続するのは不可能に近かったと思われます。
バス専用道に関しては、もう少し様子を見てみないと何とも言えませんね。ただ、鉄道時代の輸送量の推移を見る限り、「あのとき鉄道を残しておけば……」といえるほどに専用道バスの利用者が大幅に増えるとも思えませんから、いずれにせよ廃止の選択が大きく間違っているとは言えないでしょう。