わたしにとってイギリスは、「初めての外国」といえる存在です。初めて訪れたのがイギリスというわけではなく、この世に「外国」というものが存在することを知った、そのきっかけがイギリスだからです。
あれは4歳か5歳くらいのころでしたか、祖父母の家に遊びにいったときのこと。確か台所でかくれんぼか何かしていてうろついていたとき、目の前に突然、白人が現れました。初めて見た「青い目」にわたしは驚いて泣き叫び、隣の居間にいた祖父母の元に逃げた記憶があります。この当時、わたしの叔母といとこがイギリスに住んでおり、その知人であるイギリス人が、たまたま祖父母宅を訪れていたのでした。
この一件以来、わたしにとって外国といえばイギリスであり、いつかはイギリスに行ってみたいと思っていました。今回の旅行のメイン部分を東京→ベルリン間としていたにもかかわらず、ベルリンからさらに歩を進めてロンドンを訪れたのは、そうした個人的な事情があったためです。
もっとも、イギリスに行ってみたいという思いはあったものの、イギリスに行ったら見てみたいもの、行ってみたい場所があったわけではありません。イギリスといってすぐに思いつくものといえば、英語の授業で知った国会議事堂の時計塔(ビッグベン)くらいなもの。あとは鉄道絡みでヨークにあるイギリス国立鉄道博物館くらいか…。というわけで、ロンドン到着の翌日はロンドン〜ヨーク間を往復し、最後にビッグベンを見て、この旅行を終わらせることにしました。
ロンドンには東京やパリなどと同様、方面別に複数の鉄道ターミナルが存在し、ヨーク方面に向かう列車はキングスクロス駅から発車します。キングスクロス駅はセントパンクラス駅の隣にあり、前日にセントパンクラス駅から地下鉄に乗って旅行会社や安宿に移動していたので、アクセスも容易でした。
キングスクロス駅を出発して約2時間半ほどでヨーク駅に到着。事前にガイドブックの地図を確認したところ、駅舎は線路の東側、鉄道博物館は西側にあり、アクセスが面倒だなぁと思っていたのですが、実際には鉄道博物館の方に抜ける西側出口があり、駅舎を経由せずに博物館を訪れることが可能でした。
イギリス国立鉄道博物館では、数百両に及ぶイギリスの鉄道車両が保存展示されており、蒸気機関車としては世界最高速度の203km/hを記録したマラード号などを見ることができます。そして近年話題になったのが、マラード号の脇に置かれた新幹線0系の先頭車。外国の鉄道車両としては唯一の展示車両なのだそうで、車内では新幹線に関するビデオが流れていました。
ヨークからロンドンに戻り、地下鉄を乗り継いでビッグベンへ。今までメディアが紹介する写真や映像のなかでしか存在しなかった時計塔は、テムズ川のほとりに確かに存在していました。真新しいベルリン中央駅の地下ホームに到着したときは、半地下構造のような品川駅の新幹線ホームに到着したみたいで、ふに落ちなかったのですが、これを見てようやく「ユーラシア大陸を横断してきたんだなぁ」という実感がわいてきました。
4月10日から約2カ月間、安否確認ができる程度に旅先の断片を紹介してきましたが、これでいちおう終了です。今後はこの旅行の成果を出版という形で出したいところ。というより成果を出さないと、内田百間(※)よろしく「錬金術」の後始末ができません(苦笑)。
●行程
ロンドン・キングスクロス930(番号不明)1137(1140・3分遅れ)ヨーク1408(番号不明)1605(1623・18分遅れ)ロンドン・キングスクロス
※「間」は正確には「もんがまえ(門)」に「月」。
第56日(6月4日):ロンドン→ヨーク→ロンドン

コメント
> 外国の鉄道車両としては唯一の展示車両
あれ?
中国の前進型蒸気機関車はいなかった?
前進型はいなかったと思いますが。