先日の富山都心線の件に限らず、記憶違いや調査不足で間違ったことを書いてしまったことは一度や二度ではなく、そのたびに「おれはもうダメだ」と落ち込んでしまいます。そのくせ、他人の記事の間違いというのはすぐに発見できてしまうのが不思議なところ。今日もネット上の記事で間違いを見つけてしまいました(苦笑)。以下は、東京駅第7ホーム(14・15番線)の経緯について書かれたマイコミジャーナルの記事からの引用です。
東京駅には東海道新幹線のホームが3本ある。このうち、16・17番ホームと18・19番ホームは直線的な構造で、北側は丸の内中央ビルに突き当たる。しかし、14・15番ホームの北側は西へ曲がっていて、地図を見ると東北新幹線の22・23番ホームに沿っている。どうしてこんな形になっているのだろうか。
(中略)
実はこれ、東海道新幹線と東北新幹線の直通計画の名残なのだ。14番・15番ホームは本来、東北新幹線用のホームとして使われる予定だったという。ホームが曲がっている理由は、もともと北側に線路を敷いて、東北新幹線方面の列車を発着させるためだった。また、将来は東海道新幹線との直通も視野に入れていたといわれている。
第7ホーム(14・15番線)の北側は、東北回送線の線路に接続するため在来線ホーム時代から曲がっていました。その後、第7ホームと東北回送線を東北新幹線用のホーム・線路として改築することになったのは事実ですが、回送線も含めて在来線時代の形状や線形を踏襲したことから、結果的に曲がっただけといえます。
つまり、在来線時代のホームの名残、あるいは東北新幹線計画の名残とはいえるかもしれませんが、「直通計画の名残」というのは微妙なところですね。東海道新幹線〜東北新幹線の直通化を目的にホームを曲げたわけではありませんから。
これだけなら考え方の違いと言えなくもないのですが、次に引用する部分は明らかに間違っています。
1991年に東北新幹線がようやく東京駅に延伸する。しかし、このとき既に東海道新幹線の運行本数は上限となっていた。東海道新幹線と東北新幹線とでは管轄会社がJR東日本とJR東海にわかれてしまったこともあり、14番・15番ホームはそのまま東海道新幹線が使うこととなった。このためJR東日本は在来線の12・13番ホームを改造して東北新幹線に対応し、増発に対応するために9・10番ホームも東北新幹線に改造した。
東海道新幹線で先行使用されていた第7ホームを東北新幹線に明け渡すことができなくなったため、第6ホーム(12・13番線→現在の22・23番線)を東北新幹線ホームに改築したかのような書き方ですが、第6ホームは東北新幹線東京駅が計画された当初から東北新幹線用のホームに改築することになっており、第6ホームの改築はこの既定方針に基づくものです。つまり、第7ホームが使えなくなったから第6ホームを東北新幹線に転用したわけではないのです。
さすがに人の揚げ足取りだけに終始してしまうのは気まずいので、もう少し細かく見ていくことにしましょう。
東北新幹線東京駅の建設にあたっては、在来線第6・7ホームの2面4線を東北新幹線ホームに改築するとともに、4本すべての線路を東北新幹線と東海道新幹線の線路につなげて直通化に対応。さらに既設の東海道新幹線第8ホーム(16・17番線)も16番線のみ東北新幹線の線路に接続し、ホームを15番線に沿うような形状に改築する予定でした。なお、厳密には第6・7ホームの12〜14番線を東北新幹線の列車、第7〜9ホームの15〜19番線を東海道新幹線の列車にそれぞれ割り当てることになっており、14・15番線を有する第7ホームは東北新幹線と東海道新幹線の列車が同一ホームで発着することになっていたはずです。
その後、第7ホームの工事が先行し、1975年から第7ホーム15番線が東海道新幹線で使用されることになるわけですが、この間に東北新幹線の工事の遅れや東海道新幹線の輸送障害の多発などがあり、1977年に計画が変更されることになりました。この計画変更では、第7ホームを14番線も含めて全面的に東海道新幹線用ホームに編入して輸送の安定化を図ることになり、これに伴い東北新幹線ホームは第6ホームの1面2線のみに縮小。直通運転に対応した線路も第7ホーム14番線の1本のみとしました。
これにより、今度は東北新幹線のホームが不足することになるわけですが、このころ東北新幹線のサブターミナルを上野駅に設置することが決まったので、東京駅は1面2線で十分という判断になったようです。そもそも東北新幹線は、後に東京〜上野間の工事が一時凍結されてしまい、第6ホームの改築は緊急を要するものではなくなっていました。
国鉄分割民営化後の1991年、東北新幹線東京〜上野間がようやく開業し、第6ホームも既定方針通りに東北新幹線ホームに改築されましたが、第7ホーム14番線は両新幹線の直通に対応せず、最終的には直通運転を断念することになります。
詳細につきましては、わたしが『鉄道データファイル』2008年6月3日号(220号)(デアゴスティーニ・ジャパン発行)に執筆した「北陸新幹線東京駅改良工事完成」をお読みいただければと思いますが、この記事も東京駅ホーム増改築の全体像をすべて盛り込んだわけではないので、また機会があれば「東京駅ホーム史」をテーマに書いてみたいと思っています。
しかし、他人の間違いを指摘する文章を書いた後は、どうにも気が重いですね。結局のところ、自分に跳ね返ってきますから…。これを他山の石として、間違いのない記事を書けるよう努めていくしかありません。