『鉄道統計年報』の版元が変わった

 今日は鉄道関係書籍の品ぞろえが豊富な神保町の書泉グランデへ。6階にある鉄道書籍売り場の平積み台をみると、『平成19年度 鉄道統計年報』があるではないですか。ようやく発行されたのかと、即座に購入しました。

 『鉄道統計年報』とは、国土交通省鉄道局が監修し、社団法人政府資料等普及調査会が発行している統計書で、鉄軌道事業者の運輸成績などの統計が掲載されています。鉄軌道事業者の路線ごとの概要をまとめた『鉄道要覧』とともに、日本の鉄道の基礎データ集といえるでしょう。
 従来の『鉄道統計年報』は、年度末に前年度分のデータを収録したものが発行されることになっていて、たとえば『平成18年度 鉄道統計年報』の奥付によれば、2008年(平成20)3月31日の発行とされています。ところが近年は奥付の発行日より遅れることが増えており、『平成18年度』版が実際に発行されたのは11月に入ってから。そして『平成19年度』版も近年の「慣例」にならってなかなか姿を現さず、今日になってようやく現物を見ることができたのでした。

 家に戻ってから奥付を確認すると、発行日は2009年(平成21)11月26日。さすがに「3月31日」という形骸(けいがい)化した発行日を載せ続けることに後ろめたさを覚えたのだろうか、などと考えながら視線を下にずらしていくと……監修は従来通り「国土交通省鉄道局」ですが、発行は「電気車研究会」となっているではありませんか! そうです、『鉄道統計年報』と同様に国土交通省鉄道局が監修している『鉄道要覧』を発行し、そして『鉄道ピクトリアル』という鉄道趣味誌を発行している、あの電気車研究会です。どうやら何らかの事情で版元が変わったようです。

 定期刊行物の版元が変わるのは必ずしも珍しいことではありません。たとえばJTBが発行していた『旅』は、2004年(平成16)1月号限りで休刊して4月号から新潮社が発行していますし、そもそも『鉄道統計年報』にしても、手元にあるもので一番古い『昭和39年度』版(当時の書名は『私鉄統計年報』)の発行者は「白泉社」となっており、その後に版元が政府資料等普及調査会に移っています(※『花とゆめ』などの漫画誌で知られる現在の白泉社が設立されたのは1973年(昭和48)ですから、『私鉄統計年報』の発行者としての白泉社とは直接的なつながりはないと思われますが、詳細は不明です)。
 とはいえ、版元が変わるということは往々にして編集方針の変更にも及びますから、ライターとしては不安を覚えます。『鉄道統計年報』は単なる統計書なので、版元が変わったからといって内容が大きく変わるようなことはないと思いますが、『旅』の場合は女性向けの旅行誌に変わってしまい、わたしのような鉄道ライターが入り込む余地はなくなってしまいました(苦笑)。

 いわゆる出版不況が続くなか、わたしにとってのメインフィールドである鉄道趣味誌も今後どうなっていくのか予測がつきません。『鉄道統計年報』の版元変更は、鉄道趣味誌再編に向けての「号砲」となるのでしょうか。

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