24時間以内の最長距離

 ちょっと興味深い記事を、南日本新聞のホームページで見つけました。

列車24時間ギネスの旅 スタインさん鹿児島中央駅に到着
 24時間以内に列車で移動できる世界最長記録を目指した東京在住の米国人、ブライアン・スタインさんが12日午後6時3分、鹿児島中央駅に到着した。JR北海道宗谷本線・天塩中川駅から2969.5キロの旅。ギネス世界記録に近く申請する。

 なるほど、1日24時間という決められた時間内に、鉄道の乗車距離をどれだけ伸ばせるか、ということですね。鉄道高速化の歴史という意味においても、貴重な記録ではないでしょうか。
 私は以前、日本最北端の稚内駅からJR最南端の西大山駅まで、史上最短の所要時間となった列車乗り継ぎ旅行(27時間7分)をしたことがあります。そのときは稚内→「スーパー宗谷」→札幌→「はまなす」→青森→「つがる」→八戸→「はやて」→東京→「のぞみ」→博多→「リレーつばめ」→新八代→「つばめ」→鹿児島中央普通列車→西大山という乗り継ぎパターンとなり、「日本列島縦断27時間7分の旅」と題して『鉄道ファン』2004年7月号に寄稿しました。
 上の記事内容から推測する限り、スタインさんは所要時間を24時間以内に収めるため稚内天塩中川間と鹿児島中央→西大山間を切り取り、あとは私とほぼ同じパターンで列車を乗り継いだものと思われます。
 こんなことなら、私も申請しておけばよかった(笑)。

 ただ、天塩中川鹿児島中央間が24時間以内の最長距離といえるかどうか、いくつか疑問があります。
 まず、鹿児島中央駅に18時3分に到着したのであれば、18時6分に発車する鹿児島本線川内行き普通列車2460Mに乗り継ぐと上伊集院着が18時16分。所要23時間59分で、あと9.6km距離を伸ばすことができます。もっとも鹿児島中央駅の乗り換え時間が3分しかなく、実行するのはやや厳しいかもしれません。
 それと南日本新聞の記事によれば、距離は2969.5kmとのことですが、これは「スーパー宗谷」+「はまなす」の乗り換えで発生する白石〜札幌間の折り返しと、「はまなす」の五稜郭〜函館間の重複運転をそのまま計上した距離のようです。折り返しが認められるのであれば、新幹線を往復した方がもっと距離を伸ばせそうな気もしますが。ざっと調べた限りでも、八戸6:55(はやて2号)9:51東京10:10(のぞみ19号)15:13博多15:30(のぞみ42号)20:33東京20:56(やまびこ221号)23:15仙台で、3000kmを軽く超えてしまいます。
 そして一番の問題は新幹線の距離です。東北新幹線の盛岡〜東京間と東海道・山陽新幹線の全区間九州新幹線の川内〜鹿児島中央間は、並行する在来線の線路増設と見なされているため、営業上の距離(営業キロ)は在来線に合わせられています。しかし新幹線は在来線には完全に並行しておらず、たとえばトンネルで直進するなどして在来線より短く建設されており、実際の距離(実キロ)は営業キロより減ります。このため、実キロを基準に考えると、天塩中川鹿児島中央間はたぶん80kmくらい減少し、これまでの世界最長記録とされる2901.5kmを確実に下回ります。

…なんか、無粋なことをいっているような気がしないでもありません。

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