一昨日のエントリーで、『鉄道ファン』2009年11月号に寄稿した中国「寝台新幹線」の乗車ルポが意外に好評だったと書きました。ただ、実際には寝台新幹線に興味はあっても、「海外はお金がかかるから…」「言葉が不安…」などの理由で、中国行きを躊躇されている方も多いのではないでしょうか。
しかし、日本から中国を訪れて寝台新幹線に乗車するのは、確かに安くはありませんが、べらぼうに高いというわけでもありません。記事でも書いた通り、うまくやりくりすれば、寝台特急「北斗星」の往復とさほど変わらない費用で寝台新幹線に乗車できますし、それに日本と中国は同じ漢字圏の国ですから、言葉についても大きな問題にはなりません。
そこで、東京〜(飛行機)〜上海〜(寝台新幹線)〜北京間の単純往復を前提に、実際にかかる費用をシミュレートしてみました。なお、レートは1元=15円で計算しています。
●行程と費用
○1日目
東京→(快速「エアポート成田」)→成田空港 1280円
東京(成田)→(飛行機)→上海(浦東) ※航空券は後述
浦東空港→(リニア)→龍陽路 40元=約600円(※割引運賃)
龍陽路→(地下鉄2号線)→人民広場→(地下鉄1号線)→上海火車站 4元=約60円
※上海鉄路大厦酒店で宿泊 258元=約3870円
- 上海の浦東空港からは、リニアと地下鉄を乗り継いで上海の国鉄駅(上海火車站)にアクセスできます。リニアは普通席の正規運賃が50元=約750円ですが、搭乗券や航空券を示せば割引運賃で乗車できます。
- 上海火車站に到着したら、2日目と3日目に乗車する臥鋪動車組、いわゆる「寝台新幹線」の切符を購入しておきましょう。中国語が話せなくても筆談でなんとかなります。みどりの窓口に指定券の申込用紙が常備されていますが、あれと同じ要領で乗車日や乗車区間、列車番号、座席・寝台の種別、購入枚数などを書けばいいのです。私の場合、以下のような内容をメモ帳に書いて駅員にみせたところ、比較的すんなりと購入することができました。
7月19日 (※乗車日) 上海→北京 (※乗車区間) D322次 (※列車番号) 軟臥 (※寝台・座席の種別) 1張 (※購入枚数。「1張」=1枚) |
- 中国の列車は切符が購入しづらい(窓口で希望の列車を伝えても満席といわれることが多い)ことで知られていますが、上海〜北京間の寝台新幹線は1日5本も運転されており、中国人の給与水準からすれば運賃が高いことから利用者も比較的少ないです。時期にもよりますが、前日までに購入すれば大丈夫でしょう。
- この日泊まるホテルの宿泊費は、私が取材時に泊まった上海鉄路大厦酒店(上海レイルウェイマンションホテル)の料金(7月18日時点)としました。このホテルは駅の近くにあるので便利ですし、部屋によっては上海駅を発着する列車の姿を俯瞰することができます。楽天トラベルなど日本の旅行サイトでも予約できます。
○2日目
上海→(寝台新幹線)→車中泊 730元=約1万950円
- 運賃は軟臥車(営業制度上は日本のA寝台、設備構造上は2段式B寝台を4人用個室化したBコンパートに相当)の下段です。上段ならもう少し安くなります。
- 寝台新幹線が上海を出発するのは夜(21時台)ですから、それまで上海市内の観光で時間をつぶしましょう。上海〜南京間や上海〜杭州間を動車組列車(高速列車)で往復してみるのもいいかもしれません。
○3日目
→北京→(寝台新幹線)→車中泊 730元=約1万950円
- 北京には朝7時台に到着して、夜21時台に出発する寝台新幹線で上海に戻ります。それまで北京市内の観光で時間をつぶしましょう。
○4日目
→上海
上海火車站→(地下鉄1号線)→人民広場→(地下鉄2号線)→龍陽路 4元=約60円
龍陽路→(リニア)→浦東機場 40元=約600円(※割引運賃)
上海(浦東)→(飛行機)→東京(成田) ※航空券は後述
成田空港→(快速「エアポート成田」)→東京 1280円
- 朝7時台に上海到着後、そのまま空港に向かいます。飛行機の出発時刻によっては乗り継ぎが難しいですので、航空券の購入時によく確認してください。浦東空港を12時以降に出発する便なら大丈夫だと思います。
●往復航空券を含めると5〜6万円台
以上の通り、東京〜上海間を除いた運賃や宿泊費の合計は約3万円弱。中国の物価水準はひところに比べるとかなり上がりましたが、それでも日本に比べれば安く、とくに公共交通の運賃は格安といえるでしょう。
問題は東京〜上海間の往復航空券ですが、格安航空券の販売で知られるH.I.Sのホームページで検索してみると、最安値は11月が1万6000円、12月が1万8900円、1月が2万9000円となっています(11月14日現在)。燃油代などを含めても2〜3万円台で上海を往復することができるでしょうから、合計5〜6万円台で寝台新幹線の往復乗車が可能となります。
●中国の鉄道時刻表
最後に寝台新幹線のダイヤについて。中国の鉄道時刻表はインターネット上でも多数公開されており、なかには中国旅行情報局(Chinaviki)というサイトが公開している日本語版の時刻表もあります。
このページの「始点駅:」の項目に「上海」、「終点駅:」の項目に「北京」とそれぞれ入力して「検索」ボタンを押すと、上海→北京間を運行する列車の時刻表が表示されます。表示された列車のうち、列車番号がD300番台の列車が寝台新幹線の時刻になります。なお、寝台新幹線の運賃表示はプログラムの不具合なのか間違っていますのでご注意ください。
いかがでしょうか。寝台特急「北斗星」のB寝台で上野〜札幌間を往復すると、通常の運賃・料金で5万円弱となりますから、金額的には東京から北海道や九州の鉄道を乗りつぶしに行くのと同じ感覚で、中国の寝台新幹線を体験できるわけです。
費用などの問題から結果的に「国内専門」ファンになっている方も、これなら手が出せる範囲かと思いますし、一度くらいは日本の鉄道乗りつぶしの「番外編」として、中国の寝台新幹線に乗車してみるのも悪くないと思います。
【関連情報】北京〜上海間の「寝台新幹線」消滅