少年犯罪の「低年齢化」について、産経新聞がなかなか面白い記事を書いていた。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/children/54212/
【勿忘草】昭和エロ・グロ・ナンセンス
昭和エロ・グロ・ナンセンスといわれたころの新聞を見ていると、いまと世相がとても似ていることに驚く。
たとえば、非行や少年犯罪の低年齢化を取り上げた記事が、しきりと目につくのだ。表記をすこし改めて、いくつか引いてみよう。
「給仕殺される 6人組の少年が」の見出しは、1928(昭和3)年5月の某紙。17歳の少年が同じ年の少年を刺殺し、仲間と共に逮捕された。いわゆる不良連中だったという。
「少年による凶悪犯罪が最近になって急増した」というイメージが世間に定着して久しいが、実際は産経記事が書いているように、昔も少年による凶悪犯罪は存在した。そのあたりは少年犯罪データベースというホームページにも詳しく載っている(http://kangaeru.s59.xrea.com/)。産経記事はなかなか着眼点がいい。
ところがこの記事、これに続けて以下のようなことも書いている。
改正少年法が成立した。14歳未満の事件でも警察が強制捜査できるほか、11歳の小学5年生でも少年院に送られる可能性が出てきた。運用には慎重を期して欲しいが、少年犯罪がここまで低年齢化している昨今、法改正はいたしかたあるまい。
産経記事にある1928年5月の殺人事件は17歳が犯人だったが、最近の14歳男子や11歳女子による殺人事件(前者は1997年の神戸児童連続殺傷事件、後者は2004年の佐世保事件)などを踏まえて「(昭和初期に比べて)低年齢化している昨今」とし、少年法の改正やむなし、という結論を導き出したのであろう。
しかし、少年犯罪データベースを見ると、産経記事が取り上げた昭和初期だけでも
- 5歳の男の子が友人の6歳の女の子を殺害(1927年2月)
- 14歳が13歳の下級生を殺害(1927年5月)
- 10歳の女子が同級生女子を殺害(1927年6月)
- 12歳が14歳を刺殺(1928年6月)
- 9歳が隣家の6歳を射殺(1929年2月)
- 13歳が隣村の13歳を刺殺(1929年7月)
- 14歳が同級生を刺殺(1931年2月)
などといった殺人事件がぞろぞろと出てくる。それでも経済的な事情による強盗殺人ならまだ分かるが、実際にはおやつを取られてカッとなって殺した等々、動機も短絡的なものばかりで昨今の少年犯罪よりもひどい。にも関わらず産経記事は、昭和初期に起こった14歳以下による殺人事件にはまったく触れずに「少年犯罪がここまで低年齢化している昨今」としているのである。
「低年齢化→法改正やむなし」という結論を導き出すために、昭和初期の14歳以下による殺人事件は意図的に取り上げなかったのであろうか・・・いやいや、賢明なる産経新聞が、そんな「印象操作」まがいのことをするはずがない。調べ方が悪くて「たまたま」14歳以下の殺人事件だけ見落としてしまったのでしょう。きっと「偶然」ですよ、偶然。