
※(2)からの続き
車庫には給油で立ち寄ったらしく、車体後方で給油のためのホースがつなげられています。ところが、ほどなくして女性職員が車内で何か叫び、扉が開いてお客が続々とBRT列車を下りていくではありませんか。
何かトラブルが発生して運転中止か? 職員に「オソン駅に行きたい」と英語で聞いても、返ってくる言葉は韓国語で、打ち切りかどうかもはっきりしません。
BRT列車を下りた客は車庫詰所の入口前に移動していきます。別のバスに振り替えて代行輸送するということなのでしょうか? ここまで乗ってきたBRT列車は、給油が続いています。
結局、20分ほどしてBRT列車は動きだし、詰所前のお客も再びBRT列車に乗り込みました。車庫から大通りに戻り、今度は道路中央側の専用車線を走行します。
しばらくすると専用車線の左脇、つまり道路の中心線上に、柵と屋根で囲われた1車線分の舗装エリアが現れました。道路標識から判断する限りでは自転車専用道のようですが、大通りの中央分離帯に遊歩道の類を設けるのは珍しいといえるかもしれません。



路面を見ると、いつの間にか丸い点が並んでいます。これがセジョンのBRTを「亜種」たらしめる、韓国鉄道技術研究院が開発した新技術です。
BRTでは通常のバス車両を用いるのが一般的ですが、鉄道のレールと同様の案内装置を付加した「亜種」も存在します。名古屋のゆとりーとラインは、専用走行路の両脇に案内レールを敷設し、案内輪付きのバスをこれに沿わせることで自動的に進路誘導を行う「ガイドウェイバスシステム」を採用しており、これもBRTの亜種といえます。
セジョンBRTは、案内レールの代わりに磁気マーカー(路面の丸い点)を設置し、車両側の磁気誘導装置がマーカーを自動的に読み取ることで進路誘導を行う仕組みになっているようです。淡路ファームパークイングランドの丘や、2005年日本国際博覧会(愛知万博)で運行されていたIMTSと同じですね。
ここまで両手でハンドルを握っていた運転手は、磁気マーカーが現れたあたりで、ハンドルの脇にあるボタンを操作し、その後は片手運転になりました。ゆとりーとラインではハンドルの誤操作による「脱線」を防ぐため、ハンドルから完全に手を放して運転していますが、セジョンBRTの進路誘導は磁気誘導装置に頼りつつ、誘導装置の突然の故障に備えて片手を添えているのかもしれません。
ただ、マーカーが設置されている区間に入った途端、それまで60〜70km/h台で走っていたBRT列車は30km/h台に減速し、大きな橋の真ん中をゆっくり進んでいきます。これでは磁気誘導装置を導入する意味がないような……。(続く)
【目次】韓国・世宗でBRTの「亜種」に乗ってみた(1)
【目次】韓国・世宗でBRTの「亜種」に乗ってみた(2)
【目次】韓国・世宗でBRTの「亜種」に乗ってみた(3)
【目次】韓国・世宗でBRTの「亜種」に乗ってみた(4)
【目次】韓国・世宗でBRTの「亜種」に乗ってみた(5)