【新刊】「公文書でたどる鉄道裏史(12):「鉄道忌避」はあります(『鉄道ジャーナル』2021年3月号)

1月21日発売の『鉄道ジャーナル』2021年3月号、例の連載は「鉄道忌避伝説」を取り上げました。ツイッターのほうでは「青木栄一に喧嘩売る内容になる」と書きましたが(笑)、タイトルこそ青木氏に喧嘩売ってる感じではあるものの、内容としては青木氏の主張に沿っています。

「鉄道忌避伝説」とは都市伝説の一種。「鉄道が建設されると宿場がさびれる」「水運がすたれる」「蒸気機関車から出る火の粉で火災が発生する」などという理由から反対運動が起き、その結果、従来の市街地から大きく外れた場所に鉄道が建設された……という伝承です。

とくに明治中期に開通した鉄道路線で、この手の伝承らしきものが残っているケースが多いのですが、当時の公文書や新聞報道などを確認しても、そうした反対運動が起こったという話はほとんどなく、いまではそのほとんどが後世の後付け創作であろうといわれています。この結論を導き出したのが、昨年5月に死去された地理学者の青木氏でした。

私も青木氏の主張を支持していますが、近年「戦前にあったとされる鉄道反対運動は大半が鉄道忌避伝説」と言う人と何度か遭遇しており、さすがにそれはちょっと、青木氏の主張を誤解されているのではないかなあと。

明治期はともかく大正期や昭和の戦前期は反対運動がそこそこ起きています。青木氏もいくつかのケースでは反対運動があったことを自身の著書で示しており、当時の公文書でも反対運動の存在を確認できます。そこで越後交通長岡線(旧・長岡鉄道)の反対運動について、公文書でちょっと調べてみたという次第です。