北京〜上海間の「寝台新幹線」消滅

 6月30日15時、中華人民共和国(中国)の京滬高速鉄道が正式に開業しました。最高速度200km/h級の在来線(京滬線)に並行して300km/h級の高速別線を新たに建設したもので、北京南〜上海虹橋間1318kmを最短4時間48分で結んでいます。
 当初予定の最高営業速度350km/hを300km/hに減速したことについて、日本では国務院鉄道部(戦前日本の鉄道省に相当)の劉志軍部長解任、あるいはCRH380シリーズの開発における特許申請、安全性や環境の問題などと関連づけて報道されていますが、私は京滬高速線開業後の京滬線の動向が気になりました。

 京滬高速線の開業前、北京〜上海間は動力集中式の高速電車編成を使った昼行特急(動車組)が1往復ある他は、全て夜行運転を伴う列車でした。かつては機関車けん引の寝台特急(特快)が中心でしたが、2008年12月から寝台付きの高速電車編成による臥舗動車組、いわゆる「寝台新幹線」(写真)が運転を開始。その後は臥舗動車組を主体として機関車けん引の特快や客車快速(普快)が数本残るという状況でした。
 ところが、鉄道部ホームページで公開されている時刻表で京滬高速線開業後の列車を確認してみたところ、北京〜上海間を京滬高速線経由で結ぶ昼行列車が大幅に増加したのに対し、臥舗動車組は全廃。特快や普快は残りましたが、これらはもともと本数が少ないため、夜行列車が大幅に削減されたことになります。

 私は2009年7月に北京〜上海間の臥舗動車組に乗り、『鉄道ファン』2009年11月号の記事としてまとめました。このときも、航空機の発達で夜行列車が衰退するのではないかと危惧していたのですが、まさか臥補動車組がわずか2年半で運転を終了するとは、思ってもみませんでした。
 夜行列車が全て消えたわけではありませんし、臥舗動車組も北京〜上海間以外の区間では運転されています。とはいえ、日本でも新幹線や航空交通の発達により夜行列車が消滅しかかっていることを考えると、中国も京滬高速線の開業を機に夜行列車の衰退期に入ったといえるかもしれません。

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